今週のお題「部活」
あの日、あの時、確かに、僕は、輝いていたんだ。。。
中学に入学した僕は悩んでいた。
なんの部活に入ろう?
1つ決めていたことは、今までやったことの無いスポーツの部活に入ること。
卓球、バレーボール、剣道、、、、特に決定打もなく悩んでいた。
そんなとき、同じクラスの友達が誘ってくれた。
「一緒にテニス部に入ろうよ。」
テニス部。
興味がなかったわけではない。ただ、なんかちょっとカッコつけ過ぎかな(誰に対して?何に対して?)、という思春期の謎の理由で候補に入れてなかったのだ。
ただ、僕はその友達が好きだった(今でも大事な友達)。その友達は中学に入学してからの友達なので、友達になってからの時間は短かったのだけど、その友達と一緒にいたり、話をしたりしていると、なぜかとても心地よく古くからの友達のように感じていた。
なので僕はテニス部に「仮」入部することにした。
(1年生は入学後、部活を決めるまでに猶予があり、興味のある部活に仮入部して部活の雰囲気、先輩の怖さなどを確かめることができたのだ。)
テニス部に仮入部初日。
ちょっと不良な感じ(でもヤンキーではない)の、優しくカッコいい3年生の先輩たちが迎えてくれた。
さすがテニス部。ヒエラルキーの上位に属してそうな人たち!
僕も先輩みたいになれるかな?モテるようになるかな?根拠の無い淡い期待。
3年生の先輩はコートの端に集まっていた僕を含む1年生達に言った。
「みんな、素振りしてみようか。」
「最初の構えはここ。そこからラケットをおろしてきて、おへその位置でボールを捉えて振り切る。」
僕は教えられるままに素直に素振りをした。
すると、、、
「お前、上手いじゃん!!」
いきなり僕は褒められた!仮入部は他の1年生より遅かった僕。が、いきなりのお褒めの言葉!
「もう1回振ってみて。」
僕は先輩に促され、もう1回ラケットを振った。
「上手いじゃん!ちょっとボール打ってみなよ。」
僕は、仮入部初日、いきなりコートに立つことになった。他の1年生をゴボウ抜き!の快挙である!
素振りを続ける同級生達。コートに立つ僕。
ありがとう!僕を誘ってくれた友達よ!僕はテニス部のエースになるよ!上がるテンション!
コートに立つとネットの向こう側から先輩がボールを打ってくれた。
僕は教えられた素振りのフォームで、ボールを打ち抜いた!鋭くドライブをかけたボールでリターン!
新エース誕生!!
となるはずだったんだけど、まあ、そんなに世の中甘くない。動くボールを正しいフォームで打つのは難しい。バラバラのフォームで打ち返すボールはネットにかかったり、ホームランになったり。
結局すぐに素振りチームに戻されたのだった。ゴボウ土に帰る。
仮入部初日に、先輩にいきなり褒められたこと!
これが僕の輝いた時!
というわけではなくて、本当の輝きはもう少し後になってから訪れることになる。
テニス部で幸先の良いスタート!大好きな友達も一緒!ということで、僕はテニス部に正式に入部した。
季節は進み秋になった。カッコいい3年生の先輩は引退し1年生と2年生だけになった。
そして僕の学校は市の大会に参加した。
その大会は、
・学校対抗のダブルスの団体戦
・各学校から3ペア出場
・各ペアが他校のペアと1試合づつ対戦
・2勝した学校が勝ち上がる
というものだった。
(各学校の先鋒、中堅、大将が対戦して2勝したほうが勝ち)
で、
僕の学校は2年生が少なく2ペアしか作れなかったたため、1年生も試合に出ることになった。そして、幸運なことに、その出場選手に僕は選ばれたのだ!(僕、輝きそう!)
で、大会の日がやって来た。
僕の学校の顧問は策士だった。ほとんどの学校が、
先鋒:弱いペア
中堅:まあまあ強いペア
大将:強いペア(エース)
というオーダーを組むのだが、うちの顧問は違った。
先鋒:まあまあ強いペア
中堅:強いペア(エース)
大将:弱いペア(←僕のペア)
というオーダーを組んだのだ。
顧問の作戦はこうだ。
・1年ペア(僕のペア)は相手のどのペアと戦っても負ける。
・ならば捨て駒として相手の大将にぶつける。
・その他の2ペアで確実に勝つ!
まさかの展開で、僕らのペアは大将となり相手のエースペアと戦うことになったのだ!
僕の学校の先鋒、中堅が2勝したのか、1勝1敗だったのか、2敗したのか覚えていない。
ただ、僕は自分の試合の時、あまり緊張していなかった記憶なので、きっと2勝、もしくは2敗していて、学校としての勝敗はついていたのだと思う。
そして大将戦が始まった。僕はコートに立った。
始まった、と言っても実はいきなり試合は始まらない。本当の試合を始める前の数分間、相手チームとウォーミングアップの意味もあり乱打をするのだ。(お互いにボールを打ち合う。軽めのラリー。)
相手のエースがボールを打ってきた。軽めのラリーとはいえそこそこ鋭いボール。
僕はそのボールを打ち抜いた。鋭くドライブをかけたボールでリターン!
僕の後ろで見ていたギャラリー(うちの学校の人や相手の学校の人。女子テニス部員もいる!)が少し湧いた。
「おおっ!?」
明らかに捨て駒の1年生が試合前の乱打とはいえ、いいボールをリターンしたのだ。
相手のエースは僕のボールを打ち返した。僕はそのボールをを再びきれいな球筋でリターンした。
「おおーー!」
僕の後ろで湧くギャラリー。
僕がリターンする度に歓声は大きくなっていった。
歓声の中には女子の声も!
「おおーーー!」
「おおおーーーーーー!!!」
より大きくなる歓声!
「あの1年生、実は捨て駒じゃないんじゃないか?」
「実は1年生にしてエースなんじゃないか?」
「カッコいい!付き合いたい!付き合って欲しい!」
なんて声は全く聞こえなかったけど、多分、ギャラリーはそんな話をしていたに違いない!
僕は輝いていた!まばゆいぜ、自分!
が、しかし、その輝きは儚いものだった。
相手のエースは僕のラケットを持っていない側にボールを打ってきた。
僕はバックハンドでボールを打ち返した。
「べコーン。」
ラケットの変な場所にボールが当たり、ボールはあさっての方向に飛んでいった。。。
「あああーーー。」
「クスクス。」
歓声から一転、ギャラリーからはため息や笑い声が。。。
そう、僕はバックハンドがめちゃくちゃ苦手だったのだ。
その後の乱打でも、意地悪にバックハンドの方に飛んでくるボール。
間抜けな音を立てて、あさっての方向に飛んでいくボール。
僕の「輝きキラキラタイム」はあっけなく終了した。
その試合がどんな結果だったか全然覚えていない。ただ確実に負けたと思う、だってバックハンドまともに打てないんだから。
その後、、、
僕はテニス部を続け、大人になった今でもテニスは好きである。
あの日、ほんの数分の出来事だったけど、今でもあの時の情景、あの歓声、あのため息をリアルに思い出せる。いい思い出である。
あの日、あの時、確かに、僕は、輝いていたんだ!
ありがとう!僕を誘ってくれた友達よ!心から感謝!
おしまい。